組織を変える「越境」の可能性──越境プロジェクト導入事例

カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
デジタル・イノベーション推進部長 佐藤敦 様

キヤノン株式会社、株式会社朝日新聞社、新日本製薬株式会社など、日本を代表する大手企業にてキャリアを重ねてこられました。

2022年よりカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)に参画し、現在デジタルイノベーション推進部長としてCCCグループに対して、ITやデジタルを活用したビジネスプラットフォームの構築や事業部支援に関わっていました。

2024年8月からは、さらなる知見のアップデートと外部への価値提供を目的に「越境社員ドットコム」を通じた越境プロジェクトに参画。これまでのキャリアで未経験であった副業・起業という領域に挑戦し、自ら株式会社ブラインドフォースを設立しました。

本記事では、管理職である佐藤さんが「外の世界」に身を置くことでどのような学びを得たのか、またその経験が個人のみならず組織にどのような変化とインパクトをもたらしたのかについて、佐藤様の実体験をもとにお話を伺います。


――今回のプロジェクトに参加する前、どのような課題を感じていましたか?

佐藤様: 当時はCCCに転職して2年目、キャリアとしては4社目でした。情報システム部門の責任者という立場でしたが、現場に出てメンバーと議論して問題解決にあたることが好きでしたので、少し物足りなさを感じていました。

大企業の情報システム部門はエンジニアキャリアのメンバーがほとんどで、どうしても専門性の高いテクノロジーの話が多く、企業の根幹であるお金を儲けるということに距離を置いてしまいます。

VUCAの時代においては、テクノロジーとビジネスがより一体化して、情報システム部門であっても、よりビジネスコンシャスであることが求められます。

DXが当たり前に進んでいく中で、情報システム部門が事業部門を支援するだけでなく、企業の根幹である「稼ぐ組織の一員であることの自覚」が必要であると強く感じていました。

情報システム部門では非常に高額な予算を管理しています。しかしながら収支への貢献となると、コスト削減が中心です。

そんな時に今回の越境プランへの参加は、間接部門である情報システム部門であっても、そのノウハウやスキルによって稼ぐことができることを伝えて、よりビジネスコンシャスな情報システム部門への進化へ繋がっていけばいいと思っていました。


――社外での挑戦に対して、不安はありませんでしたか?

佐藤様: 多少の不安はありましたが、「なんとかなるだろう」と思っていました。新しいレベニューストリーム(収益源)を生み出すことや、新規事業を立ち上げることについては過去に経験ありました。

また、過去には他社に出向する別サービスを導入して、若手の人材育成の一環とする社内制度を構築した経験もあります。そのため、他部門で働くことや、他社の環境で力を発揮することに対する抵抗感はもともとありませんでした。


――越境先ではどのような業務を担ったのでしょうか。

佐藤様: 不動産会社に参画し、顧客管理システムの導入支援を行いました。

私が一貫して大切にしているのは「システムを導入して終わりにしない」ということです。現場が外部の支援に依存せず、自ら改善を回し続けられる“自走型の体制”を構築することをゴールに据えていました。

その一環として、ローコード・ノーコード活用したアプリ開発勉強会を立ち上げ、6名のプロジェクトメンバーとともに1冊の書籍を読み合わせながら、互いに教え合う学習環境を整えました。一方的に教えるのではなく、メンバー同士が試行錯誤しながら理解を深めていくことを意識しました。

――具体的に、どのような変化が起きましたか?

佐藤様: 最も印象的だったのは、ITの専門知識を持っていなかった現場の方が、自ら業務改善用のアプリを開発できるようになったことです。

今の時代、分からないことがあれば生成AIを活用すれば、多くのヒントが得られます。メンバーが自分で調べ、修正し、形にするようになっていきました。

実際に、その過程で社員の方が開発したアプリが、現在も現場で継続的に活用されていると聞いています。

単なるシステム導入に留まらず、現場の行動や意識そのものが変わったことを実感できた点は、非常に大きな成果だったと感じています。


――この経験を通じて、佐藤様自身の視座はどう変わりましたか?

佐藤様: 今回の越境経験を通じて、現場のメンバーとやり取りしながら問題解決に向き合う楽しさを、あらためて実感しました。

現在の本業では管理職という立場上、最終的な結果報告は受けますが、最前線の現場で起きていることやそこでの様々な気づきとは距離感があります。

しかし、出向先では直接対話して取り組むことができます。現場のメンバーと同じ目線で議論して一緒に問題を解決していく楽しさを再発見しました。

――現場に深く入り込むことで、具体的な変化や手応えを感じる場面はありましたか。

佐藤様: 非常に面白い変化がありました。どんな会社にも、過去の慣習で続けられている「非効率な業務」があるものです。現場の社員全員が「変えたほうがいい」と思っていても、組織の中だとなかなか動かないことがあります。

ところが、私のように越境制度で送り込まれた人間が「これはこうした方が効率的ですよ」と提案すると、一気に事態が動き出すこともありました。

私の提案が特別優れていたわけではなく、私という外部リソースをうまく活用して、自分の温めていたアイデアを実現させた社員もいました。そうやって現場のメンバーを巻き込み、変化のきっかけになれるプロセスは、私自身にとっても非常にエキサイティングで楽しい経験でした。


――副業としてご自身の会社も設立されたそうですね。

佐藤様: はい。これまでも、スポットでコンサルティングのような副業を経験したことはありましたが、今回のように法人を設立して取り組むのは初めてのことでした。

正直に言えば、スタートした当初は、自分が会社を設立することまでになるとは全く想像もしていませんでした。

活動を広げる中で自分の会社を設立し、決算まで経験しました。そこで初めて、税金や社会保障、年金、会社法といった「社会の仕組み」を自分事として学びました。

サラリーマンをしていると気づかない現役世代の負担の重さや、お金の流れ。この「手触り感のある知恵」を得られたことは、社会人として大きな財産になりました。

――これから越境に挑戦しようとしている方へメッセージをお願いします。

佐藤様: 一言で言えば「Just do it(やるしかない)」です。会社を辞めなくても新しい世界を見られるこの仕組みは、リスクが全くありません。今まで培ってきた経験を捨てずに、新しい武器を手に入れられるのは最高に贅沢なことです。

――どのような方や企業に、この仕組みをおすすめしたいですか?

佐藤様: 大きな組織で本業の変革に苦しんでいる企業や、50代のベテラン層です。10年かけて積み上げたナレッジは大切ですが、生成AI全盛の時代では、積み上げてきたと思っていたスキルやノウハウは思ったほど自分を助けてはくれません。過去の成功にぶら下がるのではなく、一度外に出て試してみる。その一歩が、自分自身や会社の未来を変えるきっかけになっていくのではないでしょうか。


自社の社員を越境させたい企業様