【イベントレポート】「越境社員の始めかた」—— 越境する人と受け入れる人、それぞれのリアルに迫る

2025/12/15

2025年12月3日に開催された「越境社員カフェ第13回」。

今回のテーマは「越境社員の始めかた」。
お迎えしたのは、東京都から別府のプロジェクトに関わる越境社員・岡本さん、そして受け入れ側として越境人材と協働している別府市 B-biz LINK の末崎さんです。

越境社員ドットコムでは先般、業務提携先である 一般社団法人 別府市 B-biz LINK とともに業務棚卸を実施。週1日から関われる約30件の「越境業務」を創出しました。その中で、今年7月から岡本さんが越境社員としてプロジェクトに参加し、浜脇エリアの文化資源を活かした地域づくりプロジェクトを推進しています。

今回は、お二人に「越境をどう始めたのか」「越境人材が現場でどのように働いているのか」「受け入れ側はどう活用しているのか」
——そのリアルを伺いました。

越境を検討している方、外部人材を受け入れたい組織にとって、実務の裏側が見える貴重な内容です。


〜登壇者プロフィール〜

岡本 岳志さん

東京の広告代理店にて、スポーツ・エンタメ領域のDX支援や新規事業開発を担当。 一方で、地元・新潟県妙高市にて山岳信仰文化をテーマにした地域プロジェクトを主宰。 300年受け継がれる伝承演武「仮山伏の棒遣い」の体験プログラム化や、 江戸期の精進料理「宝蔵院御膳」の復元、参詣古道の再生などを展開。 観光を通じて、文化継承と地域再生を両立するモデルづくりに取り組んでいる。 

末﨑 博樹さん

(一社)別府市産業連携・協働プラットフォームB-Biz Link 地域ビジネスプロデュースチームマネージャー

1998年国立大分工業高等専門学校卒業後に 八幡製鉄所ブリキ工場ブリキ技術配属 旧)新日本製鉄株式会社入社 
2004年4月に別府市役所入庁 総務、国保、財政、農林、環境、産業
2021年5月から(一社)別府市B-bizLINKへ派遣 起業支援・交流促進事業等現在に至る。

“越境社員”に興味を持った理由を教えてください。

岡本さん:東京で働いていると、業務が細かく分かれていて、どうしても自分の役割が限定されがちです。
40代を前に、“これまでの経験を違う環境で試してみたい”“他の地域にも貢献できるのではないか”という思いが強くなっていました。

そんな時に越境社員ドットコムの取り組みを知り、別の地域で働くことで自分の可能性を広げられるのではないかと感じ、挑戦を決めました。

越境を始めるまでに、どのような準備が必要でしたか?

岡本さん:越境先の理解がとても大切でした。地方の自治体や地域団体では、少人数で多くの業務を兼務していることが多く、東京のように“役割が明確に分かれている”とは限りません。

そのため、越境側の人間は

受け入れ側として、越境人材が来ることに不安はありますか?

末崎さん:地方自治体や地域団体にとって、越境人材を受け入れることは大きな期待と同時に、不安も伴います。
その一番の理由は、「何を依頼すればいいのか、自分たちでも言語化しきれていない」という問題です。

都市部の企業のように、

といった体制とは大きく異なり、地方では一人が複数の業務を同時に担う“兼務状態”が常態化しています。そのため、受け入れ側は越境人材に「ここをお願いします」と具体化して渡すことが難しい状況にあります。

だからこそ、越境人材の方が『私は◯◯ができます』『この部分を手伝えます』と明確に示してくれると、とても助かるんです。

受け入れ側として、越境人材に期待することは?

地域の現場では、日々の行政業務に追われ、“企画を考えて前に進める”という役割が生まれにくいのが実情です。

だからこそ、外部から来た越境人材が

この姿勢を持って関わってくれることが、大きな力になります。受け入れ側は“熱意のある人が来てくれること”自体を歓迎しており、むしろ主体的に動く人が入ることで、地域のプロジェクトが一気に動き始めます。

都市人材に“細かいオリエン”を期待するのではなく、まずは現場の状況を共有し、できる範囲から一緒に形にしていく——この柔軟なすり合わせこそ、大切なプロセスです。

越境する側も、「最初から完璧な業務指示は出ない」という前提を理解し、探索しながら関わる心構えが必要です。

現在、岡本さんはどのような業務に取り組んでいますか?

岡本さん:私は別府市の“浜脇エリア”という街を舞台に、地域文化を再発見するプロジェクトに関わっています。
街を歩いて調査したり、住民の方から話を聞いたりしながら、歴史や文化を“体験”と“記録”として残す取り組みを進めています。

現地の大学生と一緒にイベント企画にも取り組んでいて、東京では味わえない“地域と向き合う時間”の手応えがあります。

越境人材を受け入れてみて、どんな価値を感じますか?

末崎さん:外から来た人は、地域の魅力も課題も客観的に指摘してくれます。私たちが“当たり前すぎて見落としていたこと”を言語化してくれるのは、本当に大きな価値です。

また、越境人材が動くことで、地域の人たちが『じゃあ私たちもやってみよう』と自発的に動き始めることもあります。

ただ、そのためには都市と地方の“言葉の違い”をつなぐトランスレーター(翻訳者)の存在が重要だと感じています。

私たちが大切にしているのは、地元の人が自発的に動きたくなるような設計をつくることです。外から人が来て何かを“やってあげる”のではなく、地域の人自身が「関わりたい」「自分も力になりたい」と感じられる状態を目指しています。

そのためには、地元の方々が活動の中にやりがいを見いだせることが何より重要です。
この地域には、長年の知恵を持つおばあちゃん、行動力あふれる学生、ものづくりが得意な人……といった、多様で優秀な人材がたくさんいます。

こうした地元の人たちが自然と参加したくなる、温度のある環境を整えながら、
それぞれの強みが活かされ、誰もが関わりやすい“より良いコミュニティ”を育てていきたいと考えています。

最後に、越境を考えている人へアドバイスをお願いします。

岡本さん:越境は、自分の経験やスキルを新しい文脈で再発見できる非常に良い機会です。
まずは、『自分は何を提供できるのか』をはっきりさせること。そして、小さな時間からでも始めてみることをおすすめします。

末崎さん:受け入れ側にも迷いがあります。だからこそ、対話を重ねながら“お互いが動きやすい環境”を整えることが大切です。外部の力が入ることで地域は必ず変わります。

越境社員の参加によって、地域には新しい視点と動きが生まれます。
そして、越境する側にとっても、自身のキャリアを再構築する大きなチャンスになります。

「越境に興味はあるけれど、何から始めればいいかわからない」
「外部人材を受け入れたいがうまく活用できるか不安」

そんな方にこそ、このインタビューが判断材料になれば幸いです。

自社の社員を越境させたい企業様