
2026年7月1日、「越境社員カフェ第20回」が開催されました。
越境社員カフェは、越境社員ドットコム、TeamPlace、エコッツェリア協会の共同企画で開催しているコミュニティイベントです。大都市と地方、企業と地域、会社員と副業人材など、立場や場所の境界を越えて働く人や組織の事例を共有し、新しい働き方やキャリア自律のヒントを得る場として定期的に開催されています。
ゲストは、PerkUP株式会社 共同代表の斉藤晴久さん。SCSK、アマゾンジャパン、スペースマーケット、リノベるなどを経て、株式会社AnyWhere、PerkUP株式会社を共同創業してきた斉藤さんに、ご自身のキャリアをもとに「越境」の価値についてお話しいただきました。
大企業に所属しながら社外コミュニティやイベントに参加し、多様な人との接点を持ってきた経験が、その後の挑戦や起業にどう関係しているのか。当日は、業界、組織、働き方、場所を越えてキャリアを築いてきた斉藤さんの経験から、「越境」が個人のキャリア形成に与える影響について考えました。
斉藤晴久さん | PerkUP 共同代表

早稲田大学卒業後、SCSK株式会社にてERP導入プロジェクトに従事。米国留学を経てアマゾンジャパン合同会社に入社。「Amazon出品サービス(マーケットプレイス)」の立ち上げに参画し、カテゴリ拡充や300社以上の参画支援、API連携、広告プロダクトなど、同社の急成長期を支えました。
その後、スペースマーケット、リノベる等を経て、2020年に株式会社AnyWhere、同年PerkUP株式会社を共同創業。Eコマース、シェアリング、不動産テックと、異なる領域でプラットフォーム構築に携わり、国内外の多様性のある働き方を推進しています。
冒頭、斉藤さんは「越境」というテーマを聞いたとき、自身のキャリアを見直す機会になったと語りました。
斉藤さんのキャリアは、システム開発、Eコマース、シェアリングエコノミー、不動産テック、地域や働く場所に関わる事業へと広がってきました。扱う領域は変わっていますが、いずれも新しい仕組みやプラットフォームを立ち上げる仕事に関わってきた点が特徴です。
新卒で入社したSCSKでは、システム開発やERP導入プロジェクトに関わり、その後、米国留学を経験。帰国後はアマゾンジャパンに転職し、まだ日本ではマーケットプレイスという仕組みが十分に浸透していなかった時期に、「Amazon出品サービス」の立ち上げに携わりました。
当時は、Amazonが自社で商品を販売するだけでなく、外部の事業者が出品できる仕組みを広げていくフェーズでした。出品者とのネットワークづくりや勉強会の開催など、サービスを利用する事業者を増やすための取り組みにも関わっていたといいます。
一方で、大きな組織の中で新規事業に関わる中でも、同じ環境に長くいることで「このままでいいのか」という感覚もあったそうです。社内で経験を積むだけでなく、外の場に出て自分の関心を確かめることが、次の環境に移るきっかけのひとつになりました。
斉藤さんの転機のひとつになったのが、社外のイベントやコミュニティへの参加でした。
会社に所属していると、日々の仕事で関わる人や情報はどうしても限られます。斉藤さんの場合は、社外のイベントに参加することで、普段の業務だけでは出会いにくい人やテーマに触れる機会が増えていきました。
大企業から飛び出してスタートアップに挑戦する人たちが集まる場に足を運ぶ中で、立ち上げ間もないベンチャーの代表と出会い、後にスペースマーケットへ参画することになります。
スペースマーケットは、使われていない空間を貸し借りできるサービスです。場所を貸してくれる人がいなければサービスは成り立たないため、斉藤さんは、サービス提供者との関係づくりやコミュニティ形成にも取り組みました。
この経験でも、サービス提供者との関係づくりや、利用者が実際に使いやすい仕組みを整えることが重要なテーマになっていました。社外で得た接点が、次の仕事や役割につながる具体例として紹介されました。
その後、斉藤さんはシェアリングエコノミーの文脈にも関心を持つようになります。
シェアリングエコノミーとは、空間やモノ、スキルなどを所有するだけでなく、必要な人が必要なときに使えるようにする考え方です。スペースマーケットのような空間活用のサービスも、この文脈に位置づけられます。
海外では、コワーキングスペースや多様な働く場所をネットワーク化し、利用者同士がつながりながら価値を生み出す動きが広がっていました。斉藤さんは、そうした仕組みに触れる中で、場所そのものだけでなく、そこに集まる人の関係性や、互いに貢献し合う仕組みに面白さを感じたといいます。
働く場所や滞在する場所を、人の接点や活動と組み合わせることで、従来とは異なる働き方や事業の可能性が見えてきたといいます。
こうした関心は、その後のAnyWhereやPerkUPの事業にもつながっています。働く場所を選べること、人と出会えること、地域や企業との接点を持てることが、キャリアの選択肢を広げる要素として語られました。
斉藤さんが現在取り組んでいるのは、人と場所、地域をつなぐ仕組みづくりです。
越境社員ドットコムが扱う「越境」も、ここに近いテーマを持っています。企業に所属する人が、普段とは違う地域や現場に入り、そこで自分の経験や専門性を活かす。地域側も、外から来る人を受け入れるだけでなく、地域のコーディネーターや受け皿となる人を育てていく必要があります。
イベントの中では、地域側が人を受け入れるためには、単にプログラムを用意するだけではなく、「この人に会いたい」「この地域に行ってみたい」と思える顔の見える接点が必要だという話も出ました。越境する人にとっても、受け入れる地域や企業にとっても、関係性をつくる設計が重要になります。
人材、場所、地域、企業をどう接続するか。斉藤さんのキャリアでは、領域を変えながらも、プラットフォームづくりへの関心が継続していることが印象的でした。
後半の対話では、個人の越境だけでなく、企業が社員の越境をどう支えるかというテーマにも話が広がりました。
人事や組織開発の観点では、社員が社外で活動することに不安を感じる企業もあります。社外に出て新しい経験を積む人が、必ずしも元の組織に戻るとは限らないためです。
一方で、外に出た人がまた戻ってきたり、別の形で関係を続けたりすることで、会社にも新しい刺激やネットワークが生まれます。社員を社内に閉じ込めるのではなく、社外で得た経験をどう活かすかという視点が求められます。
斉藤さんは、社員が越境することを「外に出て終わり」と捉えるのではなく、卒業しても関係が続き、また協働できるような組織のあり方が大切ではないかと語りました。
社員が外で学び、社外との接点を持ち、その経験を組織にどう還元するのか。越境は、個人のキャリアだけでなく、組織の人材戦略にも関わるテーマとして語られました。
今回のセッションを通じて見えてきたのは、越境とは、必ずしも大きな転職や起業だけを指すものではないということです。初めて社外イベントに参加することや、いつもとは違う人と話すことも、越境の始まりになります。
社外のイベントに参加する、普段とは違うコミュニティに顔を出す、自分の専門性を別の文脈で試してみる。こうした小さな行動が、次のキャリアや事業の選択肢につながることがあります。
斉藤さんのキャリアからは、業界や組織を変える中で、過去の経験を別の領域で活かし直してきたことがわかります。
越境は、転職や起業のような大きな変化だけでなく、社外との接点を持ち、自分の経験を別の場所で試すことからも始まります。今回のセッションは、キャリア自律を考えるうえで、日常的な越境の重要性を考える機会となりました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
自社の社員を越境させたい企業様